2025.12.18
社内向けポスター制作事例 –啓発系メッセージをイラストで伝える
今回は、大阪の都市交通事業会社様よりご依頼いただいたポスター制作事例をご紹介します。
社内向けの啓発ポスターは、ただ注意事項を並べるだけでは、なかなか意識づけにつながりません。日常の中でふと目に入ったときに「自分も気をつけよう」「こういう言い方に変えてみよう」と感じてもらえるように、伝える内容を整理し、受け取られ方まで見据えた“見せ方”を設計することが大切です。テーマによっては強い言葉が逆効果になることもあるため、トーンや表現の選び方も重要なポイントになります。
本記事では、社内啓発用ポスター制作事例に沿って、メッセージを直感的に伝えるための工夫や、ポスターとして読み手に届く構成づくりのポイントをご紹介します。「社内に向けたメッセージを分かりやすく届けたい」「社員向けツールの表現を見直したい」とお考えの企業様の参考になれば幸いです。
目次
ポスターデザイン制作の概要
まず、ポスターデザイン制作の概要についてご紹介いたします。
ご依頼主-大阪の都市交通事業会社様-
今回の案件は、大阪の都市交通事業会社様からご依頼いただきました。大阪市内の地下鉄やニュートラムの運行を担うだけでなく、交通を起点とした都市開発や生活サービス、デジタルプラットフォーム事業を幅広く展開されています。これまでにも、当社ではポスターやチラシ、Webなど多岐にわたる制作をお任せいただいています。
ご依頼内容 -ハラスメント防止啓発ポスターの制作-
今回ご依頼いただいたのは、社内向け掲示ポスター制作です。ハラスメント防止を啓発する内容で、2パターンの内容で掲示したいとのご要望をいただきました。ひとつは「角が立つ表現」と「好ましい表現」を対比させ、良好なコミュニケーションの取り方を訴求するもの。もうひとつは、当事者以外の「第三者」がコミュニケーション不全に気づき、働きかける重要性を伝えるものです。
デザイン制作におけるポイント-イラストを用いてテーマとのバランス感を意識-
ハラスメントというセンシティブなテーマのため、受け手の立場によって印象が変わりやすい点に配慮が必要でした。そこで今回は、両案ともイラスト表現を採用し、写実的に寄せすぎず適度にデフォルメすることで、重くなりすぎないトーンを設計しています。
一方で、実際の現場で起こり得る“空気感”が伝わるよう、表情や距離感、視線の向きなどグラフィック要素も含めて丁寧に作り込みました。「気づきのきっかけになること」を主眼に、強い断定や糾弾にならないバランスを意識して制作しています。
社内啓発用のポスターデザイン制作の流れ
方向性の決定と1案目のポスターデザイン
ご依頼をいただいた段階で、社内でもどのようなアプローチで制作を進めるかを検討しました。
その中で、テーマの特性を踏まえ、写真ではなくイラスト表現を軸に制作を進める方針を決定しました。
1案目では、「同じ意味でも伝え方によって印象が変わる」ことを訴求するため、紙面を2分割した対比構造を採用しました。
初稿では、かけられている言葉の印象をグラフィックの形状で表現していましたが、検討を重ねた結果、吹き出しのあしらいで表現する構成に変更。これにより、情報が整理され、よりスッキリとした紙面にまとめることができました。
同じイラストでも、かけられる言葉によって人物が下を向いたり上を向いたりと、印象の違いが視覚的に伝わる表現を意識しています。
コピーについても先方と何度か協議を行い、日常の言葉の使い方を改めて考えさせられるポスターとなりました。

2案目のポスターラフ・デザイン調整
2案目では、「一室の中でハラスメントの現場に直面した際に、自分ならどうするか?」という問題提起をイラストで表現しました。
当事者からは声を上げにくいケースが多いテーマであることから、見て見ぬふりをするのではなく、解決に向けた一歩を踏み出してもらうことを意識しています。
そのため、紙面の手前に配置した第三者の人物に自己投影しやすい構図を採用しました。
1案目よりも直接的な内容になるため、表現が強くなりすぎないよう、イラストのタッチはよりゆるめに調整しています。
こちらの案については初稿の段階でOKをいただき、その後もスムーズに進行しました。

社内向けポスターの完成
完成した2種のポスターがこちらです。

完成した社内啓発ポスターは、ハラスメント防止への気づきを確かに発信しながらも、受け手に過度な圧迫感を与えないトーンに仕上がりました。
「言葉の違い」を対比で見せる案と、「第三者の気づき・働きかけ」を促す案という2つの切り口で、見る人が状況に応じて自分ごととして捉えやすいポスターとなっています。
クライアント様が毎年取り組まれている本プロジェクトですが、今回は全面をイラスト表現にすることで、これまでの雰囲気を一新できるデザインに仕上がったのではないかと思います。
伝えたいテーマに合ったビジュアルを設計するポイント
デザインにおいて大切なのは、情報をただ並べることではなく、「どう伝わるか」を考えることです。同じ内容でも、テーマや目的、見る人の状況によって、適した見せ方は大きく変わります。
ここでは、ジャンルを問わず意識したい“テーマに合った見せ方”を設計するための考え方を、3つの視点から整理します。
「どんな伝わり方を目指すか」を整理する
デザインを考え始める前に決めておきたいのが、「どんな伝わり方をしてほしいか」という方向性です。強く印象づけたいのか、冷静に理解してもらいたいのか、考えるきっかけにしたいのか。この軸が曖昧なまま進めると、言葉やビジュアルのトーンがばらつき、伝えたい意図がぼやけてしまいます。
ビジュアル表現は「役割」で使い分ける
写真・イラスト・図解は、どれも便利な表現方法ですが、得意な役割は異なります。写真はリアルさや説得力を持たせやすく、実物や現場の雰囲気を一瞬で共有できます。イラストは状況をやわらげて表現できるため、テーマの重さを調整したいときや、空気感を伝えたい場面に向いています。図解は情報の関係性や流れを整理するのが得意で、複雑な内容を分かりやすくするときに効果的です。今回の案件でもテーマを考慮し、写真素材は見る人の経験と結びつきすぎてしまう可能性があるため、イラストを用いて内容が過度に強調されすぎないようにしています。
見られるシーンから情報量と構成を決める
デザインは、完成した状態よりも「どこで、どう見られるか」を想定することが重要です。じっくり読まれる資料なのか、通りがかりに一瞬目に入るものなのかによって、適切な情報量や見せる順番は変わります。要点を先に伝えるのか、背景から丁寧に説明するのか。視線の流れや情報の整理を意識することで、内容が自然と頭に入る構成になります。今回の制作でも、想定する閲覧シーンを踏まえ、情報の並べ方を調整しました。
社内向けポスターデザイン制作まとめ
今回は、大阪の都市交通事業会社様よりご依頼いただいたポスター制作事例をご紹介しました。
「言葉の伝え方」に着目した対比型の案と、「第三者の気づき・働きかけ」を促す案の2方向で制作し、見る人が自分ごととして捉えやすいデザインを意識して制作いたしました。センシティブなテーマだからこそ、受け手に過度な圧迫感を与えないよう、全面をイラスト表現とすることでトーンを調整しつつ、伝えたいメッセージが見る人に確かに伝わるように設計しています。
JPCでは、ポスターやチラシなどのグラフィック制作はもちろん、社内向けツールや広報物の企画・デザインなど幅広く対応しています。ご要望やターゲットに合わせたビジュアル方向性を提案させていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。
