2026.05.07
カタログ制作事例 – 継続発行されるカタログの”顔”と”使いやすさ”をデザインする
今回は、観賞魚用品メーカー様よりご依頼いただいた、2026年版 総合カタログのデザイン制作事例をご紹介します。
毎年発行されるカタログには、単発の制作物とは異なる難しさがあります。商品の追加や差し替えに対応しながら、掲載点数が増えるほど煩雑になる情報整理。表紙も、変えなければ鮮度が落ち、変えすぎると「あの会社のカタログだ」というブランドの蓄積が途切れてしまう。情報設計とブランド表現の両面で、毎年アップデートし続ける必要があるのが継続カタログの宿命です。
本記事では、全90ページの総合カタログにおける表紙リニューアルと中面の情報設計の工夫に加え、継続発行カタログのデザインで押さえておきたい視点もご紹介します。年次カタログの制作や、総合カタログのリニューアルを検討されているご担当者様の参考になれば幸いです。
カタログデザイン制作の概要
まず、今回のカタログデザイン制作の概要についてご紹介いたします。
ご依頼主 -観賞魚用品メーカー様-
今回のご依頼主は、観賞魚用水槽や関連商品の製造・販売を手がけるメーカー様です。水槽本体はもちろん、照明器具や濾過装置、水草や砂利といったアクセサリー類まで、アクアリウムに必要なあらゆる製品を展開されています。JPCではカタログをはじめ、パンフレットやパッケージデザインなどを継続的に制作させていただいています。
ご依頼内容 -2026年版 総合カタログの制作-
ご依頼いただいたのは、毎年発行されている総合カタログの2026年版の制作です。全90ページにわたり、新商品から定番商品まで、ほぼすべてのラインナップを網羅する一冊です。
掲載商品は、水槽、キャビネット、照明器具、浄化フィルター、保温器具、水質調整用品、アクセサリー、爬虫類用品と多岐にわたります。今回は新商品の追加や既存商品のレイアウト変更に加え、表紙デザインのフルリニューアルも行いました。
デザイン制作におけるポイント -表紙リニューアルと中面の情報設計-
今回のカタログ制作で意識したポイントは大きく二つあります。
一つは、カタログの「顔」ともいえる表紙のリニューアルです。好評だった前作のトーンをあえて踏襲せず、まったく新しい方向性の表紙を提案しました。詳しい制作プロセスは次章でご紹介します。
もう一つは、中面の情報設計です。90ページ、数百点にのぼる商品群を、ユーザーがストレスなく探せる構成に整えること。カテゴリごとのキーカラー設定やスペック表記の統一、新商品ページの構成見直しなど、「使いやすさ」そのものをデザインする意識で取り組みました。
カタログデザイン制作の流れ
昨年デザインの分析と表紙リニューアルの方向性
表紙デザインに着手するにあたり、まず行ったのは昨年(2025年版)のデザインの分析です。継続して発行されるカタログにおいて、前作のデザインは重要な比較対象。何が好評だったのかを理解した上で、どこに変化をつけるのかを設計する必要があります。

昨年の表紙は、マリンブルーを基調とした鮮やかな色彩に、魚や海藻、岩場をリアルなシルエットイラストで描写したデザインでした。空気遠近法や光の演出で紙面に奥行きのある空間を構築し、表面にはざらっとしたテクスチャを施すことでアナログ的な温かみと高級感を両立——。これらは非常に完成度が高く、クライアント様からも好評を得ていたものでした。しかし、毎年同じようなトーンが続いてしまうと、ユーザーが「最新版であること」に気づきにくくなるという課題もあります。
リアルなイラストとアナログ的な質感で空間の奥行きを表現した前作に対し、今年は「シンプルさ」と「新しさ」を軸にリニューアルの方向性を定めました。
表紙デザイン2案の提案と決定
方向性を固めた上で、テイストの異なる2案を制作・提案しました。
案1:青の爽やかさを活かした有機的デザイン

こちらの案では、水に関連する「ブルー系」という軸を活かしつつ、その彩度と質感に変化をつけました。従来の青色に、グリーンを少しだけ混ぜた爽やかなエメラルドブルーを採用。これにより、水槽の中の清涼感を高めました。要素は極限まで引き算し、複雑な海藻や岩場のモチーフはあえて描かず、主役である魚のシルエットのみを配置。背景は水の揺らぎを感じさせる有機的な抽象グラフィックで、具体的な風景ではなく、水の感覚を伝えることで想像力を掻き立てる、洗練されたデザインを目指しました。
案2:白を基調としたパターンデザイン
アクアリウム関連のカタログは、水や魚を扱う商品である以上、どうしてもブルー系の表紙に落ち着きがちです。こちらは、これまでのカタログイメージを覆すべく、ベースカラーを大胆に「白」へと変更。魚や海藻、波といったモチーフをアイコン化し、それらを幾何学的に組み合わせることで、テキスタイルのような「柄」としての美しさを追求しました。ブルーを基準色、グリーンをアクセントに配し、新しさを前面に打ち出した案です。

提案の結果、案2の白を基調としたパターンデザインを選んでいただきました。今回の表紙デザインで意識したのは、単に綺麗なビジュアルをつくることではなく、昨年との違いを一目で伝えるという「機能」としてのデザインです。ブルー系が定番のアクアリウムカタログにおいて白ベースへの転換は大きな変化ですが、その意図がクライアント様にも伝わったのではないかと感じています。
中面の情報設計 ― カテゴリカラーと新商品ページの見直し
表紙の方向性が固まった後、中面の本制作に入りました。全90ページにわたるカタログの中面で最初に着手したのは、ヘッダーとインデックスのデザインです。ここで今年のキーカラーを決定し、カタログ全体の統一感を確立してから本制作に移行しています。
商品は「新製品」「水槽」「水槽台」「照明器具」「フィルター」「水温管理器具」「水質調整用品」「アクセサリー」「爬虫類用品」といったジャンルごとに整理し、それぞれにキーカラーを設定しました。ヘッダーやインデックスを色分けすることで、ページをめくらなくてもどのジャンルかが直感的にわかる設計です。

特に力を入れたのが、新商品ページの構成の見直しです。従来の構成から情報の優先順位を整理し直し、写真とテキストのバランスを調整。パッと見ただけで内容が把握でき、気になる商品をスムーズに見つけられる構成に刷新しました。新商品ページは各商品の詳細ページへスムーズに移動できる導線としても機能しています。

スペック表記も全ページで統一し、性能やサイズを商品間で比較しやすくしたこともポイントです。アクアリウムショップで実際に商品を選ぶシーンをイメージし、注文しやすいカタログを目指しました。
また、余白の取り方や文字サイズ、色使いにも細かく配慮し、長時間見ていても疲れにくいデザインを意識しました。情報量はしっかりと確保しつつも、詰め込みすぎず、読みやすさとのバランスを大切にしています。
カタログデザインの完成
完成した2026年版カタログがこちらです。

白を基調とした表紙は、昨年のブルー系とは明確にトーンが変わり、手に取った瞬間に最新版であることが伝わるデザインに。伝統ある製品カタログに新しい風を吹き込むことができたのではないかと思っています。中面はカテゴリカラーによる色分けと新商品ページの構成見直しにより、視認性と使いやすさが一段と向上した仕上がりになりました。
カタログとしての実用性はもちろんですが、ページをめくるたびに「こんな商品もあったんだ」「次はこれを試してみたい」と感じていただけるような、眺めているだけでアクアリウムを始めたくなる楽しさも意識した一冊です。
全体の統一感と使いやすさの両立を常に意識しながら進められたことは、デザイナーとしても密度の高い制作経験になったと感じています。
継続発行カタログのデザインで押さえておきたいポイント
毎年、あるいは定期的に発行されるカタログには、単発の制作物とは異なるデザインの考え方が求められます。本章では、今回の制作を通じて実感したことに加え、継続カタログ全般に応用できるノウハウも交えながら、押さえておきたい3つの視点をご紹介します。
1.「最新版である」ことを一目で伝える
継続発行カタログで特に大事なのが、ユーザーが最新版だと認識できるかどうかという視点です。ブランディングとしての統一感を保ちつつも、ユーザーがすぐに最新情報にたどり着けることが必要です。
今回は表紙のベースカラーを白に変更し、イラストのタッチもリアルシルエットからアイコン的なパターンデザインへと刷新しました。大切なのは、奇をてらうことではなく、前作とのトーンの違いが「一目でわかる」レベルの変化を意識的につくること。色彩、構成、質感のいずれかに明確な変化を設けるだけで、ユーザーの利便性は大きく向上します。

2. 欲しい情報にスムーズにたどり着ける設計
継続発行のカタログでは、カテゴリ構成やページの流れが年々最適化され、ユーザーにとって使いやすいフォーマット=「型」ができあがっていきます。この型は大きな資産ですが、新商品の情報を既存カテゴリの中に組み込むだけだと、「今年は何が新しいのか」が埋もれてしまうことがあります。
そこで有効なのが、新商品の見せ方を「本編」とは分けて考えるアプローチです。たとえば巻頭に新商品特集を設ける、あるいは既存カテゴリとは異なるレイアウトやカラーで新商品ページを差別化する——「ここが今年のアップデートだ」と直感的に伝わる設計にすることがポイントです。「まずは新しいものから見たい」というユーザーの期待にも応えられる、継続カタログならではの工夫です。
3. “守る”部分と”変える”部分を明確にする
継続発行カタログのリニューアルで最も重要なのは、「変える」ことと「守る」ことの線引きです。すべてを一新すれば新鮮さは出ますが、既存ユーザーにとっての使いやすさが損なわれる可能性があります。逆に変化が小さすぎれば、リニューアルの意味が薄れてしまいます。
今回の制作では、表紙のトーンは大きく変えた一方で、中面のカテゴリ構成やスペック表記の形式は踏襲しました。ユーザーが毎年使い慣れた「探し方」は守りつつ、キーカラーの設定や新商品ページのレイアウトなど、視認性に関わる部分は積極的に手を入れています。過去のカタログを尊重しながらも、どこに「変化」をつけるのか、そのバランス、色、形、そして余白の使い方一つひとつに落とし込むことが、継続カタログのリニューアルを成功させるカギになります。
カタログデザイン制作まとめ
今回は、観賞魚用品メーカー様の2026年版 総合カタログの制作事例をご紹介しました。
表紙のフルリニューアルと中面の情報設計の見直しを通じて、「使いやすさ」と「選ぶ楽しさ」を軸にしたカタログづくりに取り組みました。継続発行されるカタログだからこそ、前年との変化と既存ユーザーへの配慮を両立させ、手に取る方の体験そのものを向上させるデザインを意識しました。
JPCでは、総合カタログの企画・構成・デザインをはじめ、パンフレット、チラシ、パッケージデザインなど幅広い販促ツールをワンストップで対応しています。「毎年のカタログをリニューアルしたい」「商品数が多くて情報整理に悩んでいる」といったご要望がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
カタログ制作について詳しくは、こちらのページもご覧ください。
