2025.03.21
英語版のカタログ制作事例-海外向けデジタルカタログ

グローバル市場に展開している企業にとって、製品カタログの多言語対応は欠かせません。
特に発注カタログは、海外の販売ディーラーや代理店にとって、商品情報を正確に把握し、効率的な発注を行うための重要なツールです。しかし、単に日本語版のカタログを翻訳するだけで、海外向けのカタログがすぐに出来上がるわけではありません。海外市場向けのカタログ制作では、言語に適したフォントを選定したり、海外向けに掲載情報を調整したりする必要があります。
この記事では、あるスポーツ・健康関連企業様の英語版デジタルカタログを制作した事例をもとに、海外向けカタログ制作のポイントをご紹介します。
目次
英語版デジタルカタログのデザイン制作事例の概要
はじめに、今回の制作事例の概要をご紹介します。
ご依頼主 – 京都のヘルスケア企業様 –
今回は、京都に本社を置くヘルスケア関連の企業様からご依頼いただきました。この企業様は、多くのアスリートにも愛用されているボディケアアイテムをはじめ、体の健康に着目したアイテムを幅広く製造販売されています。JPCとは、長いお付き合いがあり、各種広告やチラシ、カタログをはじめ、Webサイトや映像、バナー、そして店頭ディスプレイまで幅広い販促物をお任せいただいております。
ご依頼内容 - 海外向けの英語版デジタルカタログ -
今回は、海外向けの英語版デジタルカタログの制作をご依頼いただきました。
JPCでは、この企業様の日本語版のカタログを制作させていただいております。日本語版のカタログデータをもとに海外版へ展開するため、毎年日本語版のカタログの作成が終わった頃から、海外向けのカタログの制作が始まります。
以前は、日本語版と同様に印刷して冊子として納品しておりましたが、近年では、すぐにお届けしやすいデジタルカタログとしてご利用いただくようになりました。
デザイン制作時のポイント- 多国展開されるカタログとして -
この企業様は、海外でも多くの店舗を構え、アメリカだけでなく、ヨーロッパ各国、中国、韓国、東南アジアなど、幅広い地域で展開されています。
多国で使用されるカタログを作るうえで最も重要なのは、言語と価格です。今回制作する海外向けのカタログは1種類となるため、どこの国でも読まれやすい「英語」で制作します。また、価格は、国によっても変動するため、今回のカタログでの掲載はしていません。
もし掲載される場合には、基本となる通貨(例:USドルやユーロなど)をメインに掲載し、主要ターゲット国の現地通貨での換算例をサブ情報として併記すると、顧客にとって分かりやすくなります。
また為替レートは日々変動するため、「参考価格」や「為替レートに基づく目安」といった注意書きを添えることで、誤解を避けられます。
英語版デジタルカタログのデザイン制作の流れ
これより、英語版のデジタルカタログの制作過程について、実際の流れに沿ってご紹介していきます。まずは、日本語版のカタログをもとに、レイアウトの作成を進めました。掲載情報の内容を確認いただいた上で、英語の翻訳を反映して調整したうえで、完成します。
以下より、その過程を詳細にお伝えします。
日本語版から英語版用にレイアウトを作成
今回制作するのは、秋冬の新商品を紹介するデジタルカタログです。先に日本語版で発行されていた新商品の案内を、海外向けのレイアウトにまとめていきます。
元になった日本語版の新商品案内はこちらです。

海外向けのカタログを作る際には、これをそのまま翻訳すればいいというものではありません。
ここに掲載されている商品でも、海外向けに発売されない商品がある場合は情報の取捨選択をして、掲載内容を検討していきます。また、日本と海外で商品の売れ行きが異なる場合は、海外でより売れ行きが高くなりそうな商品をメインで持ってくるなどの調整もしていきます。
初稿の段階では、お客様にご検討いただいた海外向けのレイアウトをもとに、キャッチコピーや商品の紹介は日本語のままで、製品情報の部分のみをご入稿いただいた翻訳原稿に差し替えて反映していきます。
製品情報が英語表記になると、日本語で納まっていたスペース感では納まりきらない場合があります。日本語では漢字などを使用することでコンパクトに納まっていたところが、英語表記になると長くなったり、省略せずに全てを表記しなければならなったりすることで、想定以上に場所を取ってしまうということがあるのです。
製品情報は必要不可欠で大切な情報になるので、まずこの部分が収まるスペースを確保したうえで、レイアウトを進めていきます。全体としては同じ大きさでも、製品情報が日本語版より多くスペースを取ってしまった場合には、商品の訴求を減らすこともして、掲載内容を事前に確認いただいています。
翻訳原稿をカタログに反映
こうしてレイアウトを整えたら、ついに翻訳原稿を反映していきます。
今回は、クライアント様の方で翻訳いただいた原稿を入稿いただき、差し替えの対応を進めていきました。

翻訳を反映する際には、次のポイントに気を付けて作業をしています。
① 海外での使用に耐えられるよう、必ず欧文フォントを使用する。
海外でもデータを使用するため、文字化けなどを起こさないために日本語フォントは避けます。
② 強調されていた言葉は同じ意味のところを強調する。
日本でもそうしていたように、海外に向けてもできる限りデザインでもアピールして伝えます。
③ 不自然な区切りのところで改行されないようある程度配慮する。
日本語でも読みやすさに配慮をするように、海外に向けてもわかりやすい誌面を心がけています。

もちろん最終的には、英語の堪能なお客様の方でじっくりチェックをしていただくことになりますが、私たちも誌面を制作する際には、英語のコピーを読み込んでできる限りデザイン制作にあたって配慮しています。
細部を調整してデジタルカタログの完成
今回は、デジタルカタログとしてPDFのデータと、Aiデータを納品します。Aiデータは現地で販促物などを制作する際に使用されています。
その際に、データが使えないなどのエラーが起こってしまわないように、先ほどお伝えした「欧文フォント」にするのに加えて、イラレにリンクされている画像のファイル名も英語のみにするなど、日本語を使用しないように調整いたしました。
誌面内も改めて見直し、細かいところでは、「、(日本語の読点)」を「,(コンマ)」に直したり、()は半角に変更したりしました。「〜」も欧文フォントには存在しないので、「‐(ハイフン)」に置き換えるという作業もしました。
こうして出来上がったカタログはこちらです。


今回は、全体で5ページの制作でした。印刷だと作れないページ数ですが、デジタルカタログならそのあたりの都合を考慮しなくていいため、内容を自由に調整しやすいという利点もあります。
海外向けのカタログを制作するときの注意事項
海外市場向けにカタログを制作する際には、日本国内向けとは異なるさまざまな要素を考慮する必要があります。言語の違いはもちろんのこと、文化や法律の違いも重要なポイントです。本記事では、海外向けカタログを制作する際の注意点について解説します。
どこの国で、何か国で使用されるか
まず、カタログがどの国で使用されるのかを明確にすることが重要です。ターゲットとする国によって、言語やデザインのテイストが異なるため、事前のリサーチが欠かせません。特に一つの国で使用される場合には、事前リサーチによるターゲットに合わせたデザインが有効になるでしょう。
- 言語の選定: 英語圏であれば英語のみで対応できることが多いですが、多言語対応が必要な場合もあります。たとえば、ヨーロッパでは英語、フランス語、ドイツ語など複数の言語に対応することが望ましい場合もあります。
- 文化や色彩の違い: 国ごとに好まれるデザインや色の傾向が異なるため、ターゲット市場の文化的背景を考慮したデザインが求められます。
掲載するべき情報の検討
海外向けのカタログでは、ターゲット市場の消費者が必要とする情報を的確に伝えることが重要です。
- 製品仕様の明記: 寸法や重量、使用素材などを明確に記載することで、現地の顧客に正しく伝わります。また貿易の都合などで記載しなければならない情報、書いてあると便利な情報がある場合にも事前に確認しておきましょう。
- 単位や表記の統一: 可能であれば、日本の「cm」を、米国市場向けなら「inch」にするなど、現地で一般的な単位を使用すると現地のクライアントにより伝わりやすくなります。
- 価格表記: 価格を表記する場合には、現地通貨での価格表示が必要か、税金の表記(税抜・税込)をどうするかなども検討すべきポイントです。多くの国で使用する場合には、価格表記のみ別途エクセルなどでお渡しするなど、柔軟な対応方法も検討してみてください。
掲載モデルなどの契約条件を確認
カタログにモデルや特定のブランド、イメージ写真を使用する場合、使用許諾や契約条件を事前に確認することが重要です。
- モデルリリースの取得: カタログに登場するモデルには、必ず海外での使用許諾を得る必要があります。国によって肖像権の扱いが異なるため、契約内容を明確にすることが求められます。もし掲載が難しい場合には、商品の画像のみで伝えていくなど、表現を変える必要もあります。
- 写真の著作権: ストックフォトを使用する場合も、商業利用の許可範囲を確認し、必要に応じて追加ライセンスを取得しましょう。
- ブランドやロゴの使用許可: 他社のロゴや製品が写り込む場合は、事前に許可を得る必要があります。特に海外では知的財産権の規制が厳しいため、慎重に対応することが重要です。
モデルだけでなく、国内のタレントやアスリートを掲載している場合にもその使用を慎重に確認して、検討する必要があります。日本では有名な方でも、海外で活動されていなければ、その方をわざわざ海外向けのカタログに使用しても国内ほどの広告効果を得ることができないため、海外向けのカタログには掲載しないという判断もよくあることです。
英語版デジタルカタログのデザイン制作のまとめ
今回は、海外向けの英語版デジタルカタログのデザイン制作事例についてご紹介いたしました。
英語版デジタルカタログの制作は、単なる翻訳作業ではなく、ターゲットとなる市場に適したデザイン・レイアウトへの調整が重要です。今回の事例では、日本語版のデザインを活かしながら、視認性や使いやすさを向上させ海外向けの調整を行いました。
JPCでは、海外向けのカタログ制作実績も多数ございます。海外向けのカタログ制作をお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください!
詳しくは、カタログのページもご覧ください。
カタログ詳細ページ
